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2024.4.18
「ヌミディア王国から見た古代アルジェリア史」(栗田伸子東京学芸大学名誉教授による講演会)

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 2024年4月15日、栗田伸子氏(東京学芸大学・名誉教授)による「ヌミディア王国から見た古代アルジェリア史」と題する講演会が在京アルジェリア大使館にて開催された。講演に先立ち、ブーラハベル大使が都合により欠席されたため、代ってハムルシュ公使が歓迎の挨拶を行った。
 栗田氏は、錯綜したアルジェリアの紀元前の古代史を、ヌミディア人(原住民)の王国、カルタゴ(国家)、ローマ(国家)の三つの関係を軸にしてわかりやすく整理し、説明された。先ず三つの時代区分を設定し、第1期を前9世紀~前3世紀後半までとし、カルタゴ・ポエニの影響と、これと平行したヌミディア諸王国の成立、第2期を前3世紀後半~前1世紀後半までとし、共和政期のローマと同盟しての統一ヌミディア王国の成立(マシニッサ王)、第3期を前1世紀後半からとし、ヌミディア・北アフリカがローマ帝国の直接支配下に置かれる時期とする。報告者は、ここで重要なことは、第1期と第2期の北アフリカ(アルジェリア)社会(国家)は、既に都市化、文明化を達成していたのであり、ローマの支配はむしろそれを逆転させる歴史であった、と指摘された。
 このことを踏まえて本報告の中心テーマであるユグルタ戦争(前111-前105)をとりあげる。栗田氏は、ユグルタ戦争の評価が分かれることを指摘した上で、北アフリカ史・アルジェリア史の理解におけるユグルタ戦争の意義として、帝国的支配を進めようとしていたローマの支配欲の貪欲さをいち早く告発したこと、そこに内在する問題を北アフリカ全体の問題として認識したこと、ヌミディア国民の多くが敗戦直前までユグルタを支持したことから窺える彼の王としての革命的性格などを指摘された。こうして氏は北アフリカ史・アルジェリア史の新たな歴史像の構築を促した。報告の後、言語の問題、ユグルタの現代的評価、王墓の建築様式など多くの問題について質疑が活発に交わされた。


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