協会ニュース
第16回日本アルジェリア協会定例総会開催
2025年6月18日、麻布の在京アルジェリア大使公邸で第16回定例総会が開催されました。
総会ではミラット新大使のご挨拶の後に、2024年度活動報告と会計報告が行われ、次いで2025年度の活動方針と収支予算案が協議されました。また、理事の選出では4人の理事が留任するとともに、新たに筑波大学名誉教授の青柳悦子氏が理事に選出されました。
総会後には、大使主催の懇親会が開かれ、クスクスなどアルジェリア料理が提供されました。
「進出日本企業から見たアルジェリア経済の現状-テブーン政権2期目の展望」(茨木博史・伊藤忠商事アルジェ駐在員事務所所長補佐によるオンライン講演会)
2025年4月4日(金)18時より、茨木博史・伊藤忠商事アルジェ駐在員事務所所長補佐によるオンライン講演会「進出日本企業から見たアルジェリア経済の現状-テブーン政権2期目の展望」を開催しました。
今回は現地アルジェリアから、2024年9月に再選を果たし2期目を迎えたテブーン政権のアルジェリア産業および経済の課題と展望について、1期目の成果も振り返りつつ、様々な角度から生の声をお届けする貴重な機会となりました。
講演では、アルジェリアが経済成長に伴い、2024年に世界銀行の所得水準別分類で、「低中所得国」から「高中所得国」に移行するも、依然として炭化水素の輸出が経済の柱:輸出収入の90%超、国家予算の45%を占めていることや、長年赤字が続いていた貿易収支が、輸入削減と国内産業(肥料、鉄鋼、セメント等)の育成・輸出促進の努力により、2021年以降黒字に転化したことなどが説明されました。
一方、現在炭化水素に頼っている状況から脱却するために、欧州とのグリーン水素開発プロジェクトや鉄鉱・リン鉱開発プロジェクトが進められているとのことです。ただし、炭化水素の国内需要が年々増えている状況から、上記大型プロジェクトが軌道に乗るまでの間どうしていくのか、すなわち、再生可能エネルギーによる国内消費の代替や新たな鉱床の開発を進めて輸出向けの炭化水素の量を確保しつつ、他の産業もさらに育成していくことが、喫緊の大きな課題となっているとのことです。
講演後、西サハラ問題やアルジェリア・フランス関係、中国企業の進出等について活発な質疑応答がなされました。
「アルジェリアにおけるマンガ創作の現在―その特徴と意義の考察」(青柳筑波大学名誉教授による講演会)
2025年2月14日、当協会会員の青柳悦子氏(筑波大学名誉教授)による「アルジェリアにおけるマンガ創作の現在-その特徴と意義の考察-」と題する講演会が在京アルジェリア大使館にて開催されました。
講演に先立ち、帰任されたブーラハベル大使の代わりにムラッド・アラブ臨時代理大使・公使が歓迎の挨拶を行いました。
青柳氏の説明によれば、フランスからの独立後初めてアルジェリア人による欧米式のコミック(バンドデシネ)創作が見られるようになり、1980年台から日本のアニメ放映により日本マンガファンが増えていきました。そして15年ほど前から様々な様式のマンガ創作が活発となり、日本式コミック(マンガ)が現在のコミック文化の注目すべき現象となってきました。
2008年に第1回アルジェ国際マンガフェスティバル(FIBDA)が開催され、アルジェリアが一躍マンガ文化の中心地となりました。青柳氏は、このフェスティバルに2021年に初めてオンライン参加し、2022年以降は毎年現地参加し、日本のマンガ文化を通じた国際交流に貢献してこられました。
また青柳氏の発案により、在アルジェリア日本大使館主催のマンガコンクール(CONCOURS DE MANGA)が創設され、昨年2024年に約40点の参加により実施されました。参加作品の中では、日本(人)とアルジェリア(人)の交流を描いたものが多数見受けられ、今日ますます現地の人々のなかに、日本への格別の愛着と、マンガを通じた文化的アイデンティティの創出を目指す注目すべき強い息吹が存在するとの説明がありました。
「近現代のアルジェリア美術、そしてこれから」(銅版画家・若井真由夏氏による講演会)
2024年10月2日、若井真由夏氏(銅版画家)による「近現代のアルジェリア美術、そしてこれから」と題する講演会が在京アルジェリア大使館にて開催された。講演に先立ち、ブーラハベル大使が歓迎の挨拶を行った。
若井氏は、まずアイドゥ・アブドラフマン氏(アルジェ高等美術学校教授)のインタビューから得た知見を紹介しつつ、アルジェリア美術の歴史を、第1世代:1830年-1962年、第2世代:1962年-1980年代末、第3世代 :2000年代以降とする時代区分をされ、
今日のアルジェリア美術に直接的影響を与えたのは第2世代からである、と説明をされた。氏によれば、1962年以後のアルジェリア人の作品には、ヨーロッパ人の単なる模倣ではなく、独立戦争やタッシリ・ナジュールの岩絵などからインスピレーションを得、そこにアイデンティーを重ねた芸術性が見られる、という。
1990年代の内戦期間は、イスラミストによる美術への激しい攻撃があり、芸術家や知識人たちの交流が途絶えるなど、アルジェリア美術界に深刻な打撃を与えた。2000年代に入り、アルジェリア美術があらたに復興したが、これが第3世代の登場であり、その代表的美術家としてモハメド・アズーグ氏の活動が紹介された。
第3世代の特徴は、抽象表現を含め海外の芸術潮流の最先端により敏感で、様々な手法を取り入れることであるとしつつも、この世代もやはりタッシリ・ナジュールの岩絵をはじめ自国の豊かな文化的伝統からも同時に芸術的インスピレーションを得ているという。このような美術史の流れをおいながら、現実的な問題として、
芸術全般への国家の援助の少なさ、美術市場の狭小さ(ギャラリー・オーナーの話)、美術作品を評価できる人の不足、就職の難しさなどが指摘された。アルジェ外の各地に地方美術学校が10校ほどあるが、その多くは物資、予算、人員の不足の問題を抱えている。他方で近年、高等教育以前に本格的な美術教育を行う美術高等学校が、アルジェに開校され、将来に明るい希望が感じられることも付け加えられた。
その後、若井氏自身による銅版画の制作活動について作品の紹介とともに話された。とくにアルジェリアの自然や建物、カスバの住居、ガルダイアの建築など生活体験と作品の芸術的コラボを魅力的に語られた。若井氏の講演後、山内舞子氏(美術史研究者)による補足的説明があった。
報告の後、イスラームの偶像崇拝禁止と美術活動、第2世代における伝統的なものの作品の具体例などについて質疑がなされた。
第15回日本アルジェリア協会定例総会開催
2024年6月21日、麻布の在京アルジェリア大使公邸で第15回定例総会が開催されました。総会ではブーラハベル大使のご挨拶の後に、2023年度活動報告と会計報告が行われ、次いで2024年度の活動方針と収支予算案が協議されました。また、会員から寄せられたアンケート結果をもとに、今後の「講演会テーマ」と「講演会以外の催し物」について活発な意見交換が行われました。総会後には、大使主催の懇親会が開かれ、クスクスやタジンなどアルジェリア料理が提供されました。
「ヌミディア王国から見た古代アルジェリア史」(栗田伸子東京学芸大学名誉教授による講演会)
2024年4月15日、栗田伸子氏(東京学芸大学・名誉教授)による「ヌミディア王国から見た古代アルジェリア史」と題する講演会が在京アルジェリア大使館にて開催された。講演に先立ち、ブーラハベル大使が都合により欠席されたため、代ってハムルシュ公使が歓迎の挨拶を行った。
栗田氏は、錯綜したアルジェリアの紀元前の古代史を、ヌミディア人(原住民)の王国、
カルタゴ(国家)、ローマ(国家)の三つの関係を軸にしてわかりやすく整理し、説明された。先ず三つの時代区分を設定し、第1期を前9世紀~前3世紀後半までとし、カルタゴ・ポエニの
影響と、これと平行したヌミディア諸王国の成立、第2期を前3世紀後半~前1世紀後半までとし、共和政期のローマと同盟しての統一ヌミディア王国の成立(マシニッサ王)、第3期を前1世紀後半からとし、ヌミディア・北アフリカがローマ帝国の直接支配下に置かれる時期とする。
報告者は、ここで重要なことは、第1期と第2期の北アフリカ(アルジェリア)社会(国家)は、既に都市化、文明化を達成していたのであり、ローマの支配はむしろそれを逆転させる歴史であった、と指摘された。
このことを踏まえて本報告の中心テーマであるユグルタ戦争(前111-前105)をとりあげる。
栗田氏は、ユグルタ戦争の評価が分かれることを指摘した上で、北アフリカ史・アルジェリア史の理解におけるユグルタ戦争の意義として、帝国的支配を進めようとしていたローマの支配欲の貪欲さをいち早く告発したこと、
そこに内在する問題を北アフリカ全体の問題として認識した
こと、ヌミディア国民の多くが敗戦直前までユグルタを支持したことから窺える彼の王としての革命的性格などを指摘された。こうして氏は北アフリカ史・アルジェリア史の新たな歴史像の
構築を促した。
報告の後、言語の問題、ユグルタの現代的評価、王墓の建築様式など多くの
問題について質疑が活発に交わされた。
「アルジェリアの近代建築と都市計画」及び「アルジェリア・ムザブの谷のオアシスにおける伝統的水利システムの形成と変容」(松原康介筑波大学准教授による講演会)
2024年3月27日(水)14時より在京アルジェリア大使館にて、松原康介・筑波大学理工情報生命学術院准教授による講演会「アルジェリアの近代建築と都市計画」及び「アルジェリア・ムザブの谷のオアシスにおける伝統的水利システムの形成と変容」を開催しました。後者の演題は本来筑波大学の和田夏音氏を講師として予定していましたが、体調不良のため急遽松原准教授が代理で講師を務めたものです。
本講演会は4年ぶりの大使館での対面講演会となりました。
冒頭、ブーラハベル大使より参加者に対し歓迎のご挨拶がありました。
最初の演題では、アルジェリアの建築の移り変わりを、オスマニザシオンやムーア様式に代表される植民都市、ヴィシー政権下の近代建築と辿った後、ガルダイヤの建築に大きな影響を受けたル・コルビュジエとアルジェの都市計画に関与した仏建築家プイヨン、そして独立後のアルジェの集合住宅計画に関わった日本の建築家番匠谷堯二氏について興味深いお話を豊富な写真と共にしていただきました。
また、次の演題では、ムザブの谷独特の地下水利システムについて、和田氏の研究をベースに、洪水を希少な水資源として利用する独特の水利システムをカナート等従来のシステムとの違いなどを含めて説明いただきました。
本日の講演は、アルジェリアの建築、都市計画、水利と専門的な分野ではありましたが、参加者は理解が深まるにつれ、それらの土地を訪問してみたいとの感興を持たれたのではないでしょうか。
協会理事会の開催
去る1月26日に、日本アルジェリア協会は駐日アルジェリア大使公邸で理事会を開きました。
従来から、協会の定例総会と理事会は、協会名誉会長の駐日アルジェリア大使の同席の下で
行われていました。
今回はブーラハベル新大使及び大使館関係者の出席を得て、今後の協会の活動等について活発な意見交換を行うことができました。
「アルジェリア独立戦争とド=ゴールの役割」(末次圭介専任講師のオンライン講演)
2023年12月19日(火)18時より、秀明大学学校教師学部の末次圭介専任講師によるオンライン講演会「アルジェリア独立戦争とド=ゴールの役割」を開催しました。
まず、前史から第二次大戦にいたるまでのアルジェリアの歴史について概要を話して頂きました。フェニキア、ローマ、オスマントルコ、そしてフランスとアルジェリアの領土が帝国に支配されていく過程を時代を追って説明いただきました。
続いて、第二次大戦後のアルジェリア独立運動から独立戦争へと進んでいく過程と、第四共和政から「救国の英雄」ド=ゴール登場による第五共和政成立までのフランス国内政治の混沌とした状況を簡潔に説明いただきました。
そして、アルジェリア独立戦争の激化に伴い第五共和政で大統領となったド=ゴールが、
アルジェリア和平に向けて、アルジェリア独立承認へとスタンスを変えていった経緯が説明されました。
アルジェリア独立に至るまでの複雑な状況と、独立した後もアルジェリアとフランスの二国間関係には多くの問題と課題を残したことを改めて認識する機会となりました。
新アルジェリア大使のご着任
8月にカティ・アルジェリア大使が離任され、今般後任のファリード・ブーラハベル
(Farid BOULAHBEL)大使が着任されました。前職は外務省の領事局長でした。
先週、協会の小川会長が目黒の大使館に新大使を訪問し、今後の日本アルジェリア協会の活動について意見交換を行いました。大使館と協会は二国間の友好関係を一層増進するべく協力していくことで意見が一致しました。
なお、新大使は協会の名誉会長に就任されました。
第14回日本アルジェリア協会定例総会開催
2023年6月16日、在京アルジェリア大使公邸で第14回定例総会が開催されました。総会では2022年度活動報告と会計報告が行われ、次いで2023年度の活動方針と収支予算案が協議されました。また、今まで3年間会費を滞納した場合に自動的に退会となったところを、2年間滞納で退会となるように会則が改正されました。また理事の一部交替が行われ、神谷監事は退任し名誉顧問となりました。
総会後には、カティ駐日アルジェリア大使からアルジェリア情勢につき講演が行われ、その後引き続き大使主催の懇親会が開かれ、クスクスなどアルジェリア料理が提供されました。
「ポスト・コロナのアフリカを展望する」(白戸圭一教授のオンライン講演)
2023年4月25日(火)18時より、立命館大学国際関係学部の白戸圭一教授によるオンライン講演会「ポスト・コロナのアフリカを展望する」を開催しました。
まず、アフリカにおけるコロナ禍の全体的な状況について概要を話して頂きました。アフリカでは医療・衛生水準が低いものの、圧倒的に青少年人口が多いこともあり死者・重症者数は相対的に抑えられ、現在ではほぼ正常の生活に戻っているとのことでした。
続いて、アフリカにおける経済・社会の状況について説明があり、スマホやデジタルファイナンスなどがアフリカ諸国で著しく普及し、経済成長が続いていることと合わせ、SNSの普及に伴うフェイクニュースの拡大や政情不安などの問題点などについても、直近のウクライナ戦争やそれに伴う物価上昇・生活困難などの課題を踏まえながら、詳しく話して頂きました。環境問題・気候変動などのテーマに関する質疑応答もあり、アフリカの現状について知るいい機会となりました。
「最近のアルジェリアの政治経済情勢」(河野章駐アルジェリア日本大使の講演)
2022年9月30日(金)18時よりオンライン(ZOOM)にて、河野章駐アルジェリア日本大使による講演会「最近のアルジェリアの政治経済情勢」を実施しました。
河野大使にはアルジェリアの最近の国内の政治動向や社会情勢、経済状況および対外関係、国内への投資促進策などについて話して頂きました。
コロナ禍を経て、ウクライナ情勢もあり食料品価格や油価の高騰など、アルジェリアも新たな試練に直面する中、失業保険の導入などの社会保障整備、自動車分野や再生可能エネルギーをはじめとする経済の多角化、投資促進のための規制緩和の取り組み状況などについて、興味深く知ることができました。
講演終了後、ZOOMで参加した会員の皆様と活発な質疑応答が行われ、アルジェリアの現在や今後の日本企業含む経済発展の見通しについて、様々な議論を行うことができました。
アルジェリア独立60周年記念オンライン式典のご案内
今年はアルジェリア独立60周年及び日本アルジェリア国交樹立60周年の年に当たります。
在京アルジェリア大使館はコロナ禍のために対面での式典に代え、オンライン式典を企画しました。
独立記念日の7月5日、17時より添付資料の要領でオンライン式典が配信されます。
以下のYouTubeのサイトをクリックするか、在京アルジェリア大使館ホームページからご覧いただけます。
https://youtu.be/PJ0O1Dog07E [添付資料ダウンロード]
第13回日本アルジェリア協会定例総会(書面議決)
新型コロナ感染状況に鑑み、第13回定例総会は書面議決により行われました。6月6日までの表決の結果、2021年度活動報告及び会計報告、2022年度活動方針及び収支予算案、会則の改正の各議案が可決・承認されました。
講演会等の行事については、感染の収束状況を勘案しつつ、在京アルジェリア大使館とも協力しつつ実施する方針です。